Extrachromosomal DNA is associated with oncogene amplification and poor outcome across multiple cancers
Nature Genetics volume 52, pages891–897(2020)
https://www.nature.com/articles/s41588-020-0678-2
先月にNature Geneticsに発表されたExtrachromosomal DNAの論文をご紹介します。Roel G. W. Verhaak のラボからの論文です。
最初にExtrachromosomal DNA(ecDNA)について説明します。ecDNAはUCSDのPaul Mischelのところが2017年に最初に発表したもので、染色体上に載っていない、小さな遺伝子の破片のようなもので、これが正常細胞には無いものの、多くのがんで見られることが発表されています。このecDNAは染色体上に載っていないために、mRNAの発現量が通常よりも高く、細胞分裂の際には大きく増幅されることもあって、がんの不均一性の大きな原因だと考えられています。重要ながん遺伝子も染色体の増幅ではなくて、このecDNA上で増幅されているのではと言われています。近年注目をされている分野です。
本論文では、3212例のがん患者の検体を使って、ecDNAの頻度や予後との関係を大規模に調べています。この結果、ecDNAは正常細胞ではほとんど見られないこと、がんでは大変に高い頻度で見られること、ただ、血液腫瘍では極めて稀なことを見つけています。ecDNAの有無は予後不良と関わることも示されています。どうecDNAを調べたらいいのかなどの記載も詳しく、大変に読みどころの多い論文です。
個人的な感想としては血液腫瘍では極めて稀というのに驚きました。血液腫瘍は腫瘍不均一性が低く、シングルターゲートの分子標的薬が効きやすいことが知られていましたが、これも一つの理由なのかもしれません。ecDNAが癌研究のメイントピックになってくるのではと思わせる論文でした。
Keyword:Extrachromosomal DNA(ecDNA)、血液腫瘍、遺伝子変異、染色体増幅、コピーナンバー


※図は論文からの引用です