今回はこちらの論文をご紹介します。
Gao X, Xia X, Li F, Zhang M, Zhou H, Wu X, Zhong J, Zhao Z, Zhao K, Liu D, Xiao F, Xu Q, Jiang T, Li B, Cheng SY, Zhang N. Circular RNA-encoded oncogenic E-cadherin variant promotes glioblastoma tumorigenicity through activation of EGFR-STAT3 signalling. Nat Cell Biol. 2021 Mar;23(3):278-291. doi: 10.1038/s41556-021-00639-4. Epub 2021 Mar 4. PMID: 33664496.
DNAはmRNAに変換されて、それからタンパクになります。mRNAの段階ではスプライシングと呼ばれる過程を経て、Intronが切られて、Exonのみに再構成されて、その後に蛋白質と変換されていきます。
このスプライシングの過程で、通常とは違う小さなmRNAができることがあります。その一つで、切られたものの断端がくっつきあって円状に構成されて、小さなCircular RNAと呼ばれるものを作られることがあります。Circular RNAはすでにたくさんの種類が、実際に人で存在することが示されていて、いろいろな疾患の病態にも影響していると言われています。ただ、癌ではまだその働きの多くは分かっていません。
本論文では、細胞接着因子であるE-cadherinの一部(Exon7-10)がCircular RNAを作ること、この発現が正常脳に比べて、脳腫瘍のGlioblastomaで高いことを発見しています。そして、このCircular RNAは円状になっているため、1周回って、2周目の読みではフレームシフトを起こして、通常のE-cadにはないユニークなタンパク質を作ることを示しています。このユニークな部分を含むCircular RNAは細胞外に分泌されて、EGFレセプターにくっつき活性化することを見つけています。
このE-cadherin Circular RNAのユニークな部分を標的にした抗体は、EGFR-STAT3シグナルの活性化を抑制して、腫瘍増殖抑制をできることをマウスモデルで示しています。
特定のCircular RNAもがん治療標的となるかもという新たな可能性を示した興味深い論文でした。