<論文>Petralia F, et.al., Integrated Proteogenomic Characterization across Major Histological Types of Pediatric Brain Cancer. Cell. 2020 Nov 25:S0092-8674(20)31451-3. doi: 10.1016/j.cell.2020.10.044. Epub ahead of print. PMID: 33242424.
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)31451-3?rss=yes
Cellに出た論文をご紹介します。組織学的に同一な腫瘍でも、それぞれの患者の腫瘍は異なる特徴を持っていて、治療反応性は異なります。精度を上げた治療戦略を立てるためにも、さらに精度の高い腫瘍分類が求められています。
この何十年の間に行われてきたのは、染色体、遺伝子、エピゲノム、mRNAを網羅的に調べて区別する手法です。これはDNA->mRNA->Proteinという基本的な流れの中の、DNAとmRNAまでを見ていたのですが、蛋白を詳細に調べることが十分にできていませんでした。蛋白は最終的に機能を果たすものなので、これがもっとも腫瘍の特徴と関わっていると考えられるため、この網羅的解析が試みられてきました。
今年になって、蛋白までを網羅的に調べた大規模研究が次々と報告されてきています。そんな中で、小児脳腫瘍に対して行われた研究を今回はご紹介します。
主な発見は以下です。
・218例(7組織型)の小児脳腫瘍サンプルのプロテオゲノミクス解析を行なった。
・プロテオゲノミクス解析は、組織学的な境界をも越えた生物学的特徴を明らかにした。
・プロテオゲノミクス解析は、mRNA解析では明らかにならない、DNA変異に伴う下流の変化を明らかにした。
・キナーゼ活性解析は、活性化シグナル、薬物標的の解明につながると思われた。
詳細な内容までは記載しませんが、Proteogenomicsから新たな腫瘍分類の可能性も示唆されていて、大変に興味深いデータでした。
ちなみに、この研究で得られたデータは、以下のリンクで公開されています。自分が注目している分子が、mRNAレベルと蛋白レベルでいかに違うかも、ざっと見ることが可能です。ご参考になさってください。
http://pbt.cptac-data-view.org
<トピック>Glioma, Ganglioglioma, Ependymoma, Craniopharyngioma, ATRT, Medulloblastoma、脳腫瘍、プロテオミックス