ガン微小環境におけるグルココルチコイドシグナル
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ガン微小環境におけるグルココルチコイドシグナル
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@kensho_2021phamゲスト
まず初めに、このような場を設定していただいた大須賀先生に御礼申し上げます。
私は、博士課程3年の学生で、興味半分、趣味半分という気持ちでガン研究の勉強を始めたばかりであります。そのため、理解が及んでいない点が多々あるかと思いますが、何卒ご容赦ください。
現在Twitter上で、1日1報の論文紹介とブログにて実験の詳細を記載しておりますので、この場をお借りしてリンクを貼らせていただきたく思います。
https://note.com/kensho1007/n/n51846396ab5b
それでは前置きが長くなりましたが、紹介させていただきます。
タイトルは、
内因性グルココルチコイドシグナルはガン組織微小環境におけるCD8+T細胞の分化・発達を抑制している
『Endogenous Glucocorticoid Signaling Regulates CD8+ T Cell Differentiation and Development of Dysfunction in the Tumor Microenvironment』
https://www.cell.com/immunity/fulltext/S1074-7613(20)30358-7ガン組織微小環境(Tumor microenvironment:TME)におけるCD8陽性T細胞フェノタイプ変化を知ることはガン細胞を治療する上で重要な知見をもたらす。本研究では、ガン組織内に浸潤してきたCD8陽性T細胞はガン細胞傷害性のエフェクターT細胞へと分化していくはずだが、TMEにおいてはガン細胞への傷害性が低いCD8陽性T細胞(il-2やINFgの発現が低く、PD-1やTim3の発現が高い)になっている。そのメカニズムとしてTME内でのグルココルチコイドシグナルを同定した。ここでグルココルチコイド受容体(GR)をCD8陽性T細胞でノックアウトすることで、攻撃性を有した機能的なCD8T細胞への分化が誘導された。またエフェクターT細胞への分化を抑制することで知られているTCF-1という分子はGR-cKOにより発現が抑制されておりエフェクター分化能の改善が示された。GRシグナルが引き起こす転写活性制御とCD8陽性T細胞での遺伝子プロファイル変化が一致していた。
グルココルチコイドシグナルのソースとなるグルココルチコイドは単球マクロファージの可能性が遺伝子欠損マウスおよび薬理学的な手法により示された。免疫チェックポイント阻害薬とグルココルチコイドシグナル抑制の併用が免疫チェックポイント阻害薬単独に比べて強い抗腫瘍効果を示した。
以上より、内因的な(単球マクロファージ由来)グルココルチコイドがガン組織浸潤CD8陽性T細胞の分化を抑制し、傷害性の低いT細胞へと変化させていることが示唆された。【感想】
がん組織の微小環境の研究はとても面白いと思う。以前 “ガン細胞オートファジー機構によるMHC-1分解が免疫逃避に関わる“という論文紹介をしたが、
その際に、Twitterのコメントで膵臓ガン組織微小環境における線維芽細胞(Cancer associated fibroblasts; CAFs)は、ガン細胞によってオートファジーが促進され、分解によって生じたアラニンをエネルギーとしてガン細胞に与えているという論文を紹介していただいた。このようなことを考えていると、ガン細胞は周囲微小環境を変化させることで、自身が生存していきやすい環境を作り上げている(あるいはそのように変異したガン細胞が生き残って増殖していく)のかなと考えさせられる。今回はそんなガン組織微小環境内でのグルココルチコイドシグナル(GS)に関する発見で、ガン組織内に浸潤してくる CD8陽性T細胞へのGS反対が遺伝子発現を変化させ、ガン細胞が攻撃されにくいようなT細胞時変調させていることを報告した論文だ。このようなガン細胞がエフェクターT細胞に攻撃されるのを防ぐシステムが存在すること治療を考える上では重要だ。
実験の中で免疫チェックポイント阻害薬とグルココルチコイドシグナル抑制の実験がされており、免疫チェックポイント阻害薬との併用により強い抗腫瘍効果を達成している。ガン細胞の論文紹介していく中で思ったのだが、免疫チェックポイント阻害薬との併用でどのように変化するのか、免疫チェックポイント阻害薬とメカニズム的な関わりはどうなのかというのが今の研究トレンドの一つなのだろうか。
ガン細胞は自身の生存のために、マクロファージに何かしらのシグナルを送ることでグルココルチコイドシグナルを亢進させているのだろうか。今後マクロファージのグルココルチコイドシグナルが本来もつ意義やその駆動メカニズムが明らかになることで、がん組織微小環境におけるグルココルチコイドシグナルを標的とした治療薬が期待できるかもしれない。
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okazaki yoshihisaゲスト
ご教授、ありがとうございます。
TMEでのグルココルチコイドが、腫瘍障害性T細胞への分化を調整している可能性あり。
ソースはTME内の単球マクロファージの可能性が。。。
TME内へのMΦ、好中球の侵入を阻害すると、腫瘍障害性T細胞の腫瘍内への浸潤が活発になるとの論文もあるようです。
TME研究は興味深いです。個人的妄想ですが、発生現象と”裏表”の関係にありそうですね。。。
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@kensho_2021phamゲスト
<p style=”text-align: left;”>コメントありがとうございます。</p>
腫瘍組織へのマクロファージ浸潤と傷害性T細胞の関連について過去に報告があるのですね!もし宜しければ論文詳細が分かれば教えていただけると幸いです。ガン細胞は免疫系、神経系、発生系など様々な研究が複合的に絡み合うとても複雑で面白い研究領域だと思い現在勉強に励んでいます。
今後ガン研究について皆さまにご教授いただきたく、また面白い論文を共有していたぢきたく存じます。
若輩者ではありますが、何卒宜しくお願い致します。
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okazaki yoshihisaゲスト
毎日1報論文読解。。。猛者ですね。
もう御一方、猛者を存知上げております。
aasi主催の西川伸一先生。
1日の時間をどのように使われているのか。。。興味沸きます。
TMEにおける好中球・MΦの役割については、西川伸一先生のコーナーで知りました。
具体的な論文:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0092867420308783
TMEは本当に興味深いです。(ただ、今の技術で全貌を解明できるのか???と思うことも多いですが)
今後ともよろしくお願いいたします
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@kensho_2021phamゲスト
論文紹介していただき、有難うございます。
早速読ませていただきます。
論文ウォッチは本当にすごいです。
私も参考にさせていただきながら、どのように文章化していくのか
という視点からみても大変勉強になりますし、日々刺激を受けております。
こちらこそ今後とも宜しくお願い致します。
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okazaki yoshihisaゲスト
やはり、aasj西川伸一先生は凄いですか!!
私も同感です。
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okazaki yoshihisaゲスト
こうした微小環境における細胞間コミュニケーションにexsosomeが関与してないでしょうか?
miRNA、MHC分子、DNA断片を内包し情報分子として細胞間を行き来する。。。
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