<論文>
KRAS G12C Inhibition with Sotorasib in Advanced Solid Tumors. N Engl J Med 2020 Sep 24;383(13):1207-1217. doi: 10.1056/NEJMoa1917239.Epub 2020 Sep 20.
今週はがん研究にとって、歴史的な発表が一つありました。KRAS阻害剤の有効性がPhase1の臨床試験でついに確認されました。
KRAS変異はがんにみられる代表的な遺伝子異常の一つで、とても頻度の高いものです。そのため、この遺伝子異常を標的とした薬剤の開発はずっと行われてきました。しかし、分子構造の特性などから、この開発は難航を極めて、KRASはUndruggable(薬剤開発は困難)とさえ言われてきました。
そんな中で、KRASのG12C 変異というパターンを標的とした薬剤であるSotorasib (AMG 510) が開発され、その有効性に注目が集まっていました。今週のNEJMで、この薬の最初の臨床試験であるPhase1の結果が発表されました。
ちなみに、KRASのG12C 変異はnon–small-cell lung cancers (NSCLCs) の13%、colorectal cancerの 1 – 3%にみられるタイプの遺伝子変異です。本試験では、129例の患者 (59 NSCLC, 42 colorectal cancer, 28 other tumors) に投与されて、 NSCLCグループでは 32.2% がobjective response (complete or partial response)、 88.1% がdisease control (objective response or stable disease)。colorectal cancerグループでは、7.1% がresponseで、73.8%がdisease control。副作用は11.6%でgrade 3 もしくは 4 eventsが見られています。投与関連の死亡は見られていません。
<p style=”text-align: center;”>※図は当該論文から引用</p>
これは大変に期待できる結果です。今後の臨床研究が順調にいけば、KRASを標的とした薬剤がついに世に出る可能性が高まりました。また、同じくKRASのG12C 変異を標的としてPhase1/2が進行中のMIRATIの「MRTX849」にも期待が高まります。さらに、この成功は他のKRAS遺伝子変異へ治療薬開発と続くことも期待されます。
がん治療薬開発の長い歴史の中でも貴重なマイルストーンではと感じましたので、報告をさせてもらいました。
Keyword: KRAS, non–small-cell lung cancers, 肺がん、colorectal cancer, 大腸癌、分子標的薬