新臓器が発見される！放射線障害に影響か？
新臓器が発見される！放射線障害に影響か？
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未知の新臓器を発見したという、驚きの論文を紹介します。
今回の発見をしたのはオランダの研究チームでした。彼らは、前立腺癌などのがん患者100例にPSMA-PET検査を行った画像を後方視的に検討したところ、鼻と口が奥で交わるあたりに、4cmほどの長さの器官が左右ともに存在していることを発見しました（図）。これは100人全員に見つかり、これには液体を分泌する排出口が存在していて、内部は液を分泌できる構造になっていたため、唾液を分泌する臓器であると思われました。唾液を分泌する組織（唾液腺）は今までに３対（左右合計６個）存在することが知られていましたが、もう一対が新たに見つかったことになります。
研究グループは、この新臓器が口の乾燥防止に関わっているのでは推察し、その役割を詳しく調べるために、頭頸部癌の患者723例のデータを後方視的に調べました。頭頸部癌では放射線治療が行われることがあるのですが、放射線が既知の唾液腺にあたると傷害を与えてしまい、その機能が悪くなって、口が渇いて、飲み込みづらくなる副作用がでることが今までに知られていました。
この新しい唾液腺にもその関係が見られるのではと、研究者は疑って調べました。その結果、新臓器への放射線照射は、その後の口腔乾燥および飲み込みにくさの副作用と因果関係があることを発見しています。このことから、今後はこの臓器を避けるように放射線照射を行えば、口腔乾燥などの副作用が防げるのではと、研究者はこの論文で主張しています。
この主張について、正しいかの明確な結論を出すには、さらなる検討が必要ではあると思います。後方的な検討であって、実際にこの臓器を避けて放射線照射を行うと症状に違いがあるかを臨床研究しないと、明確な結論にはならないかと思います。ただ、今後のがん治療において、患者さんの副作用を軽減できることにつながるかもしれず、とても興味深い発見です。
この時代に臓器レベルの大きな組織が、新たに見つかったことに、私は正直驚きました。この発見に貢献したのは、PSMA-PETという特殊な画像検査です。従来のCTやMRIなどの画像検査は、主に物理的な形の情報を提供します。それに対して、PET検査というのは、特定の物質が存在するところを浮かび上がらせる検査になります。物理的な形よりも、機能・代謝を見ていると言えます。
新臓器は今までのMRIなどでは、ただの喉の奥の壁と見えていたのですが、機能検査であるPETを使ったところ、PSMAという物質が集まっている領域があるということがわかり、特殊な機能を持った部位ではと考えられ、発見されたという経緯があります。今回のことより、PET検査のような新たな画像検査を利用すると、まだまだ他にも新しい臓器が見つかる可能性があるのかもしれません。
人体はすでに知り尽くされているようで、まだまだ謎も多く、新たな科学技術の開発が近い将来に新たな発見に導いてくれるかもしれません。なんだかワクワクする研究報告でした。
出典）Valstar MH, et.al., The tubarial salivary glands: A potential new organ at risk for radiotherapy. Radiother Oncol. 2020 Sep 23:S0167-8140(20)30809-4.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167814020308094
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