ATRTsに対するB7-H3-CAR-T細胞の可能性(前臨床)

がん医療最新論文フォーラム がん医療最新論文フォーラム がん医療最新・重要論文 ATRTsに対するB7-H3-CAR-T細胞の可能性(前臨床)

ATRTsに対するB7-H3-CAR-T細胞の可能性(前臨床)

  • このトピックは空です。
0件の返信スレッドを表示中
  • 投稿者
    投稿
    • #12249 返信
      okazaki yoshihisa
      ゲスト

      nature medicine

      Published: 27 April 2020

      『Locoregionally administered B7-H3-targeted CAR T cells for treatment of atypical teratoid/rhabdoid tumors』

      (key word)

      悪性ラブドイド腫瘍、B7-H3-CAR-T療法、投与経路

      (背景)

      B7-H3分子を標的とした、治療抵抗性+頭蓋外固形腫瘍や脳腫瘍の免疫治療が試みられています。前臨床試験では、B7-H3を標的としたCAR-T細胞の全身投与は、小児固形腫瘍治療に有効ではないかとの期待を抱かせます。しかし、B7-H3分子発現の不均一性等のため、単一標的CAR-T細胞療法には限界がありそうです。

      今回、彼らは、まず

      47個のATRTサンプル、10種のATRT細胞株を解析しました。

      ●100%の腫瘍・細胞株で、B7-H3分子の発現を確認しました(Fig. 1a–d )。

       

      ●B7-H3分子の発現程度:

      72%は、強発現(37 / 47; H-score > 200)

      23%は、中等度発現 (11 /47, H-score = 100–200)でした。

       

      ●(Fig1.b)に、2人の1歳未満の乳児ATRT患者組織の例を示しています。

      B7-H3 分子は細胞表面に、豊富に・一様に存在しているようです。

      腫瘍近傍の正常大脳皮質組織や小脳には存在していないようです(Fig. 1c)。

       

      こうしたデータは、ATRTsに対する、B7-H3-CAR-T細胞療法の有用性を示唆します。

      そこで、

      BT16-ATRT細胞を脳に移植した、xenograftマウスモデルを作製、B7-H3-CAR-T細胞、CD19-CAR-T細胞を作製し、

      ●腫瘍内直接投与(IT)

      ●側脳室内投与(ICV)

      ●尾の静脈内投与(IV)

      の3経路の投与方法を設定し、CAR-T細胞の体内動態を調べました。

      CD19-CAR-T細胞、B7-H3CAR-T細胞をそれぞれの方法で投与し比較します。

       

      IT,ICV法で、B7-H3-CAR-T細胞投与群は、有意に生存割合の上昇を認めました(P=0.0003、P=0.0007)。

      IV法では、CD19-CAR-T細胞vsB7-H3CAR-T細胞間に有意差は見られませんでした。

      それぞれ、1×10^6個の細胞を投与しまたが、IT,ICV法では、末梢血中のB7-H3-CAR-T細胞数は、投与後20日頃をピークに、その後は、急激に減少し1×10^5個前後でプラトーに推移します。

      IV法では、両細胞とも、死亡するまで単調に増加していました。

       

      血清中のサイトカイン濃度:

      炎症性サイトカイン(IFN-γ、IL-4、IL-10)はIV法で著明に増加していました。

      IT法・ICV法では、コントロール群と比較しても有意な増加は認められませんでした。

      これは、IV法による投与が、CRS等の副作用を引き起こし安いことを示唆しています。

       

      しかし、IV法マウスでは、CAR-T細胞投与後、13日目に血中サイトカインの減少が認められます。

       

      次に、投与ルートによって、B7-H3-CAR-T細胞の腫瘍浸潤能・集積能に違いがあるか調べます。

      NanoLuc ルシフェラーゼ発現B7-H3-CAR-T細胞を作製します。

      IT法・ICV法では、投与後、5日後に腫瘍内へのB7-H3-CAR-T細胞集積が確認されましたが、IV法では腫瘍内への集積は有意に減少していました。

      投与後、2日後の組織標本では、IT法・ICV法では、B7-H3-CAR-T細胞の腫瘍組織への浸潤が確認されましたが、IV法では確認できませんでした。

       

      さらに、投与B7-H13 -CAR-T細胞が、末梢組織に移行するかどうか確認しました。

      ICV法で、投与後13日目、27日目とB7-H13CAR-T細胞の脾臓・肝臓への顕著な移行が確認されます。

      IT法では、脾臓・肝臓への移行は少ないようです。

       

      つまり、

      B7-H3-CAR-T細胞の

      IT,ICV投与法は、腫瘍への速やかな集積と、抗原刺激(B7-H3刺激)による速やかな増殖を可能にすると思われます。

      また、ICV投与法は、B7-H3-CAR-T細胞の速やかに末梢組織(脾臓)への移行すると考えられますが、この現象は、副作用の危険性を高めるかもしれません。

       

      最後に、

      CRISPR–Cas9を使って、BT16/B7-H3 ノックアウト細胞系を作製し、再発時実験を行いました。

      BT16細胞、BT16/B7-H3 ノックアウト細胞移植前、

      IT,ICV,IV全ての系列で、初回治療から40日後の脳内にB7-H3-CAR-T細胞は殆ど存在していませんでした。

      BT16/B7-H3 ノックアウト細胞を脳内に移植した時、全ての投与経路で、移植腫瘍へのB7-H3-CAR-T細胞の集積を確認できた。

      BT16/B7-H3 ノックアウト細胞を腹部に移植した時も、ICV法・IV法で、腹部病変部へのB7-H3-CAR-T細胞の集積を確認できた。

      ⇒ATRTsは、しばしば中枢神経外への伸展(特に腎臓)が見られるので、こうした、B7-H3-CAR-T細胞の性質は望ましいものかもしれない。

      (結論)

      B7-H3-CAR-T細胞の腫瘍内直接投与(IT)、側脳室内投与(ICV)は、ATRTsに対する治療として有望であると考えられました。

      (感想)

      CAR-T療法をkey-wordに論文検索した結果、偶然ですが、悪性ラブドイド腫瘍、胞状横紋筋肉腫、神経芽細胞腫と小児難治性悪性腫瘍に関する論文となりました。これらの疾患に対して有効な治療法の開発が望まれており、世界中でチャレンジンングな試みが行われていることが、実感できました。

      今回は、Figの掲載なしの文章のみとなりました。

      掲載方法も色々ためしていきたいです。

      (注1)

      B7-H3分子、CD276とも呼ばれる。

      共刺激タンパク質B7ファミリー(B7-1やCD80など)に属するI型膜貫通タンパク質です。CD28とCTLA4のようにCD28ファミリー分子を介してシグナル伝達します。B7-H3は、単球由来の樹状細胞や、副鼻腔組織の上皮細胞、絨毛外栄養膜細胞、プラセンタのHofbauer細胞など、広範囲に発現します。B7-H3は、免疫チェックポイント分子であり、T細胞性免疫応答の制御に関与します。いくつかの固形癌で発現しています。

      (注2)ATRTs

      悪性ラブドイド腫瘍と呼ばれ、1歳までの乳幼児に多く発症します。非常に進行が速く、現在でも非常に治療が困難な腫瘍です。日本では年間15例程度あると考えられています。体のあらゆる部位から発生し、腎や脳に発生する患者さんが多いです。特に脳に発生した場合は非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(ATRTs)と呼ばれます。ATRTsは、遺伝子変異が極めて少ない腫瘍で、多くの腫瘍細胞でSMARCB1/INI12遺伝子に、2対立遺伝子での不活性化変異が認められます。SMARCB1/INI12遺伝子は、SWI/SNF型クロマチン再構成因子複合体のコア蛋白をコードし遺伝子発現を調節しています。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

0件の返信スレッドを表示中
返信先: ATRTsに対するB7-H3-CAR-T細胞の可能性(前臨床)
あなたの情報: