CRISPR/Cas9による生体内での遺伝子修復

CRISPR/Cas9による生体内での遺伝子修復

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    • #15515 返信
      大須賀覚
      ゲスト

      Gillmore JD, Gane E, Taubel J, Kao J, Fontana M, Maitland ML, Seitzer J, O’Connell D, Walsh KR, Wood K, Phillips J, Xu Y, Amaral A, Boyd AP, Cehelsky JE, McKee MD, Schiermeier A, Harari O, Murphy A, Kyratsous CA, Zambrowicz B, Soltys R, Gutstein DE, Leonard J, Sepp-Lorenzino L, Lebwohl D. CRISPR-Cas9 In Vivo Gene Editing for Transthyretin Amyloidosis. N Engl J Med. 2021 Jun 26. doi: 10.1056/NEJMoa2107454. Epub ahead of print. PMID: 34215024.

       

      直接にがんとは関係がないのですが、これは知っておかないといけない論文だと思ったのでご紹介します。

      CRISPR/Cas9という遺伝子を書き換える新技術があります。この技術を使って、病気の異常遺伝子を直そうという試みがされてきました。ただ、今までは技術的な問題もあって、体外での使用に限定されていました。

      NEMJに報告された本研究では、初の患者さんへの静脈内への直接投与が行われて、一回投与だけで、難病患者の異常遺伝子修復に成功しています。遺伝性ATTRアミロイドーシスという疾患の患者さんのTTRという異常タンパク質を発現させる遺伝子を標的にしていて、TTRを減少させることができることが示されています。また、目立った副作用も認められていません。

      今回のCRISPR技術では、正常細胞が持たない変異遺伝子を標的にしているため、正常細胞への影響は少ないようにデザインされています。また、標的外の遺伝子が攻撃されないように、きめ細かなデザインをされています。このようなアプローチで安全性が確認されていくと、単一遺伝子の異常で起こる遺伝子疾患の治療に広く使える可能性があります。また、がんの変異遺伝子などにも応用できる可能性があるかと思います。

      異常遺伝子を標的とした遺伝子治療では、今まではmRNAを標的としたものが多かったのですが、この場合には継続的な投与が必要で、治療がとても高額になるという問題がありました。それに対して遺伝子そのものを書き換えてしまうCRISPR技術を利用した本手法では、単回投与で長期的な効果が期待できるのではと思われます。

      CRISPR技術が直接的に人に投与されるのにはまだまだ時間がかかると思っていたのですが、驚くほど早かったという印象です。造血系疾患に対して、体外での編集と、その後に体内に戻すという手法が最初かと思っていましたが、それおも飛ばして一気に使われることになりそうだなと感じます。

      CRISPRは遺伝子にフレームシフトなどを起こして破壊するだけだと難しくはなく、正常化させるまで行くと煩雑すぎて難しいと考えますので、ただ壊すというのを狙うことになるかと思います。そのため、がん抑制遺伝子よりはがん遺伝子の方が良いターゲットなのかもしれません。

       

      ますます、このフィールドは面白くなってきているなと感じます。医療の新たな扉が開いたと感じる研究結果でした。

    • #15516 返信
      Okazaki yoshihisa
      ゲスト

      大変重要な論文のご紹介ありがとうございます。

      静脈内1回投与で副作用なし。

      衝撃的です。

      おそらく、他の様々な疾患に適応されていくと思われます。

    • #15517 返信
      Okazaki yoshihisa
      ゲスト

      阪大医学部生のころ、公衆衛生実習で『遺伝子治療について』アンケートしました。

      まだ、20世紀末の頃。

      帰ってきたアンケートで印象に残ってる答え:遺伝子治療は頭の悪い人々の考えることです。との答えが印象に残っている。

      あの当時、皆に否定されたな。数学科の恩師の先生も否定的だった。。。。

      世の中、一寸先は闇だ。。。。

    • #15518 返信
      Okazaki yoshihisa
      ゲスト

      原論文は読めてないのですが、肝細胞にCRISPRをデリバリーするのは、mRNAでしょうか?

      脂質膜に包まれた?

    • #15519 返信
      Okazaki yoshihisa
      ゲスト

      確認しました。

      mRNAを脂質二重膜で包んだキャリアを静脈内投与ですね。

      しかし、DDS技術の進歩も目を見張るものがあります。

      [20210628更新] CRISPR/Cas9 KOによるヒト遺伝病in vivo治療の第1相試験始まる – NEJMに中間報告 : crisp_bio (blog.jp)

    • #15520 返信
      大須賀覚
      ゲスト

      岡崎先生、コメントをありがとうございます。

      ご指摘のように、この研究ではDDSの技術も入っております。

      DDS+CRISPRというのも現実的に臨床で使うレベルにきていると感じます。

    • #15521 返信
      Okazaki yoshihisa
      ゲスト

      それにしても、この治療法、興味深いですね。

      mRNAという“化学物質”に担わせた“情報”さえ細胞内にデリバリーできれば、

      細胞=自然のオートマトン=フォン・ノイマンマシン内の“天然の自己組織化・組み立て工場”を使って、

      “薬”が製造され“治療”が実行されるわけです。。。

      いやーー。

      ジェネシス・マシンですね。生命って!!

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