核酸コンピュータで治療する!?

核酸コンピュータで治療する!?

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      okazaki yoshihisa
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      Science . 2020 Jan 24;367(6476):446-453.

      『An RNA vaccine drives expansion and efficacy of claudin-CAR-T cells against solid tumors 』

       

      (key word)

      RNAナノ粒子ワクチン、樹状細胞、CLDN6、CLDN6-CAR-T、固形腫瘍、ガン免疫療法

       

      (はじめに)

      前回は、腫瘍溶解ウイルス療法とCAR-T細胞療法を組み合わせて、固形腫瘍を治療するアイディアの論文を読みました。今回は、RNAナノ粒子ワクチン(核酸コンピュータ)、樹状細胞、CAR-T細胞療法を組み合わせて、固形腫瘍を治療するアイディアの論文を読んでみました。

       

      (背景)

      様々な原因で固形腫瘍に対しては、CAR-T療法が上手く効果を発揮しないことが知られています。今回は、CLDN分子(注1)に着目し、この分子を攻撃目標としたCAR-T細胞療法の可能性を試験しています。

       

      (準備)

      CLDNの一種であるCLDN6分子に着目すると、

      マウス組織では、胎児組織には広範囲の臓器に発現が認められますが、成人マウスの殆どの臓器組織では、その発現が消失しています(Fig.S1A)。

      ヒト組織では、胃・膵臓・肺・腎臓で胎児に転写レベルの上昇を認めますが、成体では消失することを確認しています。(Fig.S1B)

      50種以上の非担癌健常ヒト成人組織から検体160個以上を集め、qRT-PCR法で分析したところ、CLDN6遺伝子の転写は殆ど認められませんでした(Fig. 1A and Fig. S2B)。

      更に、免疫組織化学的アッセイで40件以上のヒト成人正常組織を解析したところCLDN6蛋白質は検出できませんでした(Fig. 1B).。

      逆に、ヒトの精巣ガン、卵巣ガン、子宮がん、肺腺ガンといった多くのガン組織でCLDN6遺伝子の転写が確認され(Fig. 1A and Fig. S2, A to C).、免疫組織化学的アッセイでは、CLDN6蛋白質がガン細胞細胞膜に発現されていることが確認できました(Fig. S2C)。

       

      このような解析結果を総合して、

       

      ”ヒトでは、CLDN6分子は、正常組織では殆ど発現されておらず、固形腫瘍に極めて特異性が高い細胞表面抗原であり、CAR-T細胞治療の標的になりうる可能性”が示唆されました。

       

      (本編)

      最初は、試験管内実験を行います。

      共刺激ドメインに4-1Bを、受容体部分にCLDN6-scFvを持つ第二世代CLDN6-CAR-T細胞を作製しました(Fig. 1C).。

      (同様な方法で、以後の実験で使用する、CLDN18.2-CAR-T細胞も作成できます。)

       

      CLDN6を発現していない ヒト COLO-699N 肺癌細胞にCLDN6RNA導入した試験管内実験系では、CLDN6タンパク質の発現量に比例し、CLDN6-CAR-T細胞による細胞溶解現象が観察されました(Fig. 1D)。

      同じタンパク質ファミリーに属し、構造上CLDN6に酷似し、毒素に晒されると、ヒト成人組織で発現が見られるCLDN3, CLDN4, CLDN9分子を発現した細胞は、CLDN6-CAR-T細胞によって破壊されませんでした(Fig. 1E)。

      CLDN6発現ヒトガン細胞とCLDN6-CAR-T細胞を共培養すると、INF-γの有意な産生を認めました。(Fig. 1F)

      CLDN6⁺PA-1発現卵巣ガン3次元培養モデルにCLDN6-CAR-T細胞を加えたときのみ、3次元培養モデルの崩壊が認められました(Fig. 1G)。

      次に動物実験です。

      CLDN6発現卵巣ガン細胞モデル=OV90を皮下に移植したNSGマウスをヒトCLDN6-CAR-T細胞で治療します。ヒトCLDN6-CAR-T細胞で治療した群は全て、14日以内に腫瘍の完全消失を認めました(Fig. 1H)。

      また、治療に成功したマウスでは、循環血液中にCLDN6-CAR-T細胞の検出を確認しています。

      Fig1⇒

       

       

      ここまでのデータは、CLDN6-CAR-T細胞療法の固形腫瘍治療への展開に希望を持たせます。

      しかしながら、これまでの研究で明なように、CAR-T療法の固形腫瘍への展開には次のような障害が存在すると考えられています。

      障害①:

      腫瘍環境でCAR-Tと標的腫瘍の適度な接触が阻害されることにより、CAR-T細胞数が急激に減少し治療効果がなくなる。

      障害②:

      CAR-T細胞が腫瘍微小環境に侵入後に、免疫抑制環境のためCAR-T細胞への増殖シグナルが減弱する。

       

      そこで、このグループは、 “がんワクチン療法”にも着目し、

      RNAナノ粒子(核酸コンピュータ)投与⇒樹状細胞取り込み⇒樹状細胞による“CLDN6分子”抗原提示⇒CLDN6-CAR-T細胞への継続的な増殖シグナル発信⇒CLDN6-CAR-T細胞の抗腫瘍効果継続⇒固形腫瘍完治

      これを生体内で再構築し治療に応用することを着想しました。

      この人工的サイクルを以下:CARVac療法と呼びます。

      このグループは、過去に血管内投与可能な、抗原蛋白をコードしたRNAを脂質膜で包むナノ粒子を開発しています。RNA-LPX(RNAコンピュータですね)と呼ばれています。このRNA-LPXが腫瘍関連T細胞をヒトがん患者体内で刺激することも以前の研究で確認しています。(L. M. Kranz et al., Nature 534, 396–401 (2016)).

      更に、このRNA-LPXは、脾臓・リンパ節・骨髄の樹状細胞まで抗原を輸送し、Toll-like受容体依存性のtypeⅠIFN誘導性の免疫刺激や抗原特異的T細胞増殖なども刺激することも確認されているようです。

       

      そこで、今回は、RNAとしてCLDN6蛋白(CLDN18蛋白も)をコードする物を選び、リポソームで包み、RNA-LPXとして利用します。

       

      まず試験管内実験です

      CLDN6(CLDN18)RNA-LPXを樹状細胞(DC)に取り込ませると、容量依存的にCLDN6(CLDN18)分子がDC細胞表面に発現されることを確認しています(Fig2A)。

      さらに、CLDN6-CAR-T細胞を共培養すると、種々の抗腫瘍性サイトカインの分泌が有意に高まることも確認できます(Fig2B)。

      CLDN6-RNA-LPX投与によるCLDN6分子の発現は、脾臓の樹状細胞・マクロファージに認められ、リンパ球には認められないことも確認しています(Fig2C)。

      (Fig2D)でのマウスin vivo実験で、CLDN6-RNA-LPX投与により、CAR-T細胞が全身のリンパ組織で増殖することも確認しています。

      Fig2⇒

       

      In-vivo実験です。

      (Fig3)では、CLDN6-RNA-LPX刺激効果が容量依存的に強まること、CLDN6-RNA-LPX刺激回数を増やすことで、生体内でのCAR-T細胞数の減少を食い止めることができることを確認しています。

      Fig3⇒

       

      いよいよ、担癌マウスでのin-vivo治療効果判定実験です。

       

      Fig4-A:

      C57BL/6 マウスで、ヒトCLDN6蛋白を誘導したLL/2-LLc1 腫瘍を移植したモデルに

      CLDN6-RNA-LPX血管内投与+ CLDN6-CAR-T細胞投与を図示されたプロトコールで実施した時にのみ、CLDN6-CAR-T細胞数の増加、腫瘍サイズの著名な減少、マウス生存率の改善を認めています。

       

      Fig4-B:

      BALB/cマウスで、ヒトCLDN18.2蛋白を誘導したCT26腫瘍を移植したモデルに

      CLDN18.2-RNA-LPX血管内投与+ CLDN18.2-CAR-T細胞投与を図のようなプロトコールで実施した時にのみ、CLDN18.2-CAR-T細胞数増加、腫瘍サイズの著名な減少、マウス生存率の改善を認めています。

      最後に、

      NSG マウスに OV90 腫瘍を移植したモデルにて、CLDN6-RNA-LPX血管内投与+ CLDN6-CAR-T細胞投与を、Fig4-Dのプロトコールで投与した治療解析です(CLDN6-RNA-LPXワクチンの頻回投与ですね)。

       

      CLDN6-RNA-LPX投与+ CLDN6-CAR-T細胞投与の場合にのみ、腫瘍体積の減少、CD4⁺細胞、CD8⁺細胞の増殖、CAR-T細胞の増殖、しかも、血中の至適CAR-T細胞数の維持の達成効果などが確認できました(Fig4-D)。

      Fig4⇒

      図4

       

      (結論)

      今回の概念検証実験から

      適切なガン標的抗原の発見・CAR-Tへの搭載(CLDN6分子)。
      適切なガン標的抗原に対応した、RNA-LPXの頻回投与
      この2点を組み合わせた、CARVac療法が、固形腫瘍に対するCAR-T療法になりうる可能性を示唆する研究だと思います。

      ただ、今回の研究で検討された以外にも、CAR-T細胞療法を固形腫瘍に展開するときの障害が指摘されており、免疫系と生体と腫瘍微小環境との複雑な関係のさらなる研究も求められているようです。

      個人的には、“微小環境での免疫細胞の可塑性”とかも興味惹かれます。面白い論文があるとよいのですが。。。

      (追伸)

      今回の研究を読みながら連想した記事:

      『病気をなおすDNAコンピューター』

      Ehud Shapiro先生の独創的idea。。。その後どのように展開しているだろうか?

      http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0608/dna-comp.html

       

      注1:Claudin:日本人の月田承一郎先生のグループによって発見された、細胞間結合の様式の1種である、タイトジャンクション(密着結合)の形成に関わる主要なタンパク質です。

      https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3

    • #266 返信
      okazaki yoshihisa
      ゲスト
      0

      (追伸)

      今回の論文読んだ後、”CARVac療法の変形版、コロナワクチンに使えない?”って思ってネット調べたら、このベンチャー企業、ファイザーと組んで”RNAコロナワクチン”開発やってました。

      様々な疾患に関与しているだけあって、免疫系を操作する技術って、汎用性もあるんですね。

      https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine/

       

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