分化異常と腫瘍増殖の新たな関係

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    • #14759 返信
      大須賀覚
      ゲスト

      論文:Chen CCL, et.al. Histone H3.3G34-Mutant Interneuron Progenitors Co-opt PDGFRA for Gliomagenesis. Cell. 2020 Dec 10;183(6):1617-1633.e22. doi: 10.1016/j.cell.2020.11.012. Epub 2020 Nov 30. PMID: 33259802; PMCID: PMC7791404.

      解説:小児の脳腫瘍であるGliomaには、いくつかの遺伝子変異のサブタイプがあります。その中の一つがHistone H3.3G34-mutationです。このヒストン変異があるタイプへの有効な治療手段は十分に確立されていません。

      今回の論文では、この腫瘍にはPDGFRAの高発現や遺伝子変異が入っている特徴があるのをまず見出して、その理由を解析しています。

      その結果わかったメカニズムが驚くものでした。著者はこの腫瘍はInterneuron progenitorを起源にしていることをまずみつけ、さらにこのInterneuron progenitorの重要なレギュレター遺伝子のGSX2の遺伝子座の近くにPDGFRAが位置していることに注目します。そして、ヒストン変異の入った腫瘍細胞では3次元的なクロマチンの構成が変わって、PDGFRAがGSX2のenhancerを利用して異常増殖していることを見出しています。ヒストンが変異することで、特定の分化段階に入った時に、増殖シグナルが入ってしまうという関係になっていたということになります。

      大変に面白い発がんメカニズムと思いました。がんの発生には分化段階の異常が関わっていることが知られています。今回のでは、その分化制御している遺伝子の近くにDriver Geneがあることで、Lineage specificな強力な発現システムを、Driver geneも利用しているということが起こるのだなと驚きました。分化段階を示すマーカー遺伝子と、Driver遺伝子の、遺伝子内での位置関係も忘れずにみるべきところなのだなと感じました。大変に面白かったです。

       

    • #14762 返信
      okazaki yoshihisa
      ゲスト

      染色体の立体構造変化も発癌機構の重要な因子!?

      彫刻のように3次元情報も重要なのだと思います。

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